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院長コラム

化学物質過敏症について思うこと(2021.01.02更新)

 最近では、化学物質過敏(CS:chemical sensitivity)の記事が 新聞に掲載されたり、また日本医師会でも「香害」についてのパンフレットが出されたりして、だいぶその認知度が高まってきました。

 この病気に関わる上で重要な点を私なりに以下にまとめてみました。

 1    最も重要な事は この病気の概念がまだ固まっていないことです。CSは慢性疲労症候群、線維筋痛症などとの関連疾患として分類されています。これらの疾患も病態がまだ明らかになっていません。つまりよくわからない病気ということです。日本では2009年に病気としての登録がありますが、WHOは特定の化学物質が症状を引き起こすとを認めておらず、この病態を本態性環境不耐症としています。また厚生労働省もWHOの見解よりです。

2 CSは症状が多彩で、その人それぞれで症状が異なります。鼻炎、喘息などの粘膜刺激症状、動悸などの循環器症状、下痢便秘などの消化器症状、異常発汗などの自律神経症状、不眠不安、鬱などの神経症状など多彩です。そのため、その症状に応じてドライアイ、咳喘息、アレルギー性鼻炎、自律神経系の病名、うつ病などいろいろな診断がつけられます。そして医師にとって不可解な症状や病態のため、多くは心療内科への受診を勧められています。       

3 症状の出現のパターンは杉花粉症などのアレルギー性疾患と酷似しています。その物質にある期間をかけて暴露、感作されると突然発症します。アレルギーとはAという人にとっては有益なものであっても、Bという人にとっては有害なもの。臭い等に対する人の反応も同様です。しかし違いは、アレルギーはその物質に対するIgE抗体の上昇を認めますが、CSではそのような特異的な検査データはありません。

4 疫学調査(北條祥子:2018)による報告をまとめてみますと、

  • CSの発症頻度:年々増えており、10年前と比べると3倍に増加している。米国やスウェーデンで約12%。日本では6%台
  • 性差と好発年齢:3対1で女性に多い。女性では、40才代に大きなピークがあり次いで55から59才にもピークがある。男性も女性と同様な傾向がみられた。
  • 年少者や何らかのアレルギー疾患のある人は、新築・リフォーム後にシックハウス症候 群(SHS)を発症しやすい。
  • 症状で多いのは、芳香剤による片頭痛が8割以上。

**環境省が温暖化防止対策の一つとして、香り付きの柔軟剤や制汗剤の使用を推奨するような対策を取り始めた2000年以降に、他人の使用する高残香性製品による健康障害(香害)を訴える患者が急増している**

  • 喘息などのアレルギー疾患の合併が8割以上に見られた
  • 6割の人が、職場の香害のために、過去 1 年間で、休職したり、重症者は失職をしています。
  • 60% 以上の人が化学物質過敏だけでなく、電磁過敏反応を示した。
  • 喫煙・ 香料使用などで常に微量化学物質に曝露されていると、一時的に、化学物質不耐性が隠蔽 (Masking)されることがある。現状では症状はマスキングされているが、 何らかのきっかけで過敏反応が顕在化し、CSを発症する可能性がある。私も禁煙した後に突然CSを発症しました。

5 米国では2010年デトロイト市で、市職員が同僚の香料で呼吸困難に陥ったことがきっかけに、市職員に香料の使用を禁止しました。その流れを受け、全米に香料使用自粛の動きが広がってきました。昨年、私のクリニックで見ているCSの中学生が米国のソルトレークシティーの家庭でホームステイしました。いろいろ心配したのですが、香料などの化学物質に対する配慮が徹底していたとのことで、笑顔でその報告に来てくれました。

6 この病気の難しいところは、1と関連しますが、たとえCSと診断されても、周囲の人がそれを理解してくれず、病気の存在そのものを否定してしまう事です。慢性疲労症候群、繊維筋痛症も同様な傾向があります。

7 この病気と付き合っていく上で大切な事は、自分の周りに1人でもいいですから、この病気を理解してくれる人を作ることです。私もCSの症状がありますが、発症当時は、家内にも理解してもらえず苦労しましたが、クリニックの看護師にも同様の症状があったため、ようやく理解してもらうことができました。    

   以上これまで化学物質過敏症について感じたこと、考えていることを述べてみました。この病態を持った人は、周りの人に理解してもらうように働きかける事も大切ですが、まず自分の身の回りを見直し、改善できところは改善して、そして孤立しないように、1人でも良いですから理解者を獲得するようにしてください。また影響を受けやすい子どもたちの発症を抑えるために、化学物質過敏症に対する啓蒙活動と環境対策の必要性を訴えてゆかなければならないと思います。

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