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なぜ?子どもの感染率低い(新型コロナウイルス)

[2020.07.10]

昨年暮れ、武漢より始まった新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が世界を席巻し、日本はもとより各国も対応に苦慮しているところです。感染拡大当初より、なぜか子どもの感染が少ない、重症化がほとんどないとの報告があり、このことは世界的に共通のようです。

最近この謎がわかってきました。コロナウイルスが細胞に感染するとき、細胞の表面にあるACE2レセプター(アンジオテンシン変換酵素2)にウイルスが接合し、これを足場として細胞の中に入り込んできます。この足場のACE2が子どもたちは大人に比べて少ないためのに感染を受けにくいと推測されています。

**日本小児科学会がまとめている「子どもの新型コロナウイルスの特徴」

1 患者の中で子どもの割合は少ない。ほとんどは家族内感染で感染

2 学校などでのクラスターはない、あるいは極めて稀

3 成人と比べて軽症で、死亡例もほとんどない

4 ほとんどの子どもの症例は経過観察や対症療法で十分とされている

5 学校などの閉鎖は、流行阻止効果に乏しい。逆に看護師などの医療従事者が仕事を休む必要があり、死亡率を高める可能性もある

ということで、子どもをお持ちの皆さんは、子どもたちのことはあまり心配しなくてよいという内容です。ただし大人にとっては非常に危険な病気ですので十分注意して対応してください。

下記はコロナウイルスが細胞に入って行くときのメカニズムを図式化したものです。

「SARS-CoV-2が人体に感染するには細胞の表面に存在する受容体タンパク質(ACE2受容体)に結合したのち、ウイルス外膜と細胞膜の融合を起こすことが重要である。コロナウイルスの場合、Spikeタンパク質(Sタンパク質)がヒト細胞の細胞膜のACE2受容体に結合したあとに、タンパク質分解酵素であるTMPRSS2で切断され、Sタンパク質が活性化されることがウイルス外膜と細胞膜との融合には重要である。」(東京大学医科学研究所アジア感染症研究拠点の井上純一郎教授と山本瑞生助教による)

コロナウイルスが細胞に侵入するためには、ACE2レセプターに接合するだけではだめで、次のステップとしてヒトの細胞表面に存在するタンパク質分解酵素であるTMPRSS2が必要とのことです。そしてこの酵素を阻害する薬が以前より膵炎の治療に使われていたフサン(ナファモスタット)という薬です。フサンがウイルス侵入過程を阻止し、感染を極めて効果的に阻害する可能性を持つと考えられています。ようやく光明が見えてきたと思います。

コロナが始まってから、予防接種を受ける子どもが2から3割減ったとのことです。今回の話ではありませんが、子どもたちにとってコロナは恐ろしい病気ではありませんので、親御さんが注意して予防接種を受けに連れてきてください。病気に対する一番の武器は予防接種ですので。

2021.5.14

今年の4月頃より多くの変異株が日本にも入り込み、急速に広がりを見せています。各地域で変異株の占める割合は異なりますが、東京都では9割近くになるとの報告もあります。この変異株は、伝染能力が非常に強く、子どもにも伝染しやすく、家庭内で発生した場合、家族全滅となるケースが多いようです。また20代、30代の若い世代でも重症化することが多くなっています。しかし幸いなことに子どもの重症化の報告はありません。

これまでの対応では感染抑制の効果があまりありませんので、もう一段強い対策が必要になるかもしれません。皆さんもこれまで以上の対応を心がけてください。

ファイザーのワクチンが変異株にも有効との報告がありました。65才以上の接種が7月いっぱいで終わりますので、その後、16才以上の接種が始まりましたら、積極的に接種を受けるようにしてください。

 

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