抗生物質は万能薬??
咳やお腹の風邪など万病に抗生物質が効くのでは?と、なんとなく思っている人も多いのではと推察されますが、皆さんどうでしょうか。「風邪は万病のもと」といいますが、風邪がこじれて細菌による二次感染を起こすと考えるのはある程度自然です。医者の世界でも二次感染を予防するために抗生物質を使用するといった考えがまかり通り抗生物質を多用した時代もありました。しかし今ではいろいろな理由で使用を制限するようになっています。
ところで抗生物質とはどんなものでしょうか? 抗生物質(英語: antibiotics)とは「微生物が産生し、ほかの微生物の発育を阻害する物質」と定義されています。わかりやすく解説すると、「抗生物質とは強敵同士である細菌と真菌が戦う武器」で、その能力は「細菌に穴をあけて破壊する」「細菌に毒を与える」「細菌から繁殖能力を奪う」の3つです。つまり細菌と戦う武器ですが、ウイルスに対しては全く戦力にはなりません。
ここで抗生物質の使用が今、なぜ制限されているかについて考えてみます。
子どもたちが罹る病気の主なものを挙げてみますと、インフルエンザ、ライノウイルスなどによる咳風邪、手足口病、ヘルパンギーナなどの夏風邪、RSウイルスやヒトメタウイルスによる細気管支炎、ロタウイルスやノロウイルスによる感染性胃腸炎など多くの病気がウイルスによるものです。という事でほとんどの病気に対しては抗生物質が無効という事です。抗生物質の適正使用は、まず第1にウイルス性疾患には使わない。第2には不適切な使用で耐性菌を作らないようにすることです。つまりその原因菌に対し効果のある抗生物質を一定量、一定期間使用することです。適応もないのに長期間だらだらと使うとその抗生物質が効かなくなる耐性菌が増えるからです。第3には、以前は新しい抗生物質が次々と開発されていましたが、今は、開発の難易度が上がり、なおかつ使用量が減り不採算部門となったため、新しい抗生物質がほとんど作られなくなっています。つまり、耐性菌を作らないようにして、今ある薬を大事に使い重症感染症と戦うようにしなければなりません。
当クリニックでは、皆様の健康を守ることを第一義に、抗生物質の適正使用を常に考えて診療を行っております。皆様のご理解ご協力よろしくお願いします。